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シャトー・メルシャン 椀子ワイナリーに訪問して

シャトー・メルシャン 椀子ワイナリーに訪問して

(魅力性を秘める世界の椀子ワイナリー、第2、3の椀子の可能性)


葡萄の騎士の会

                       幹事 白石和光


椀子ビンヤード産出ワインはいずれもクリアーな飲み口で飲み干した後、薫りの余韻が

長く続き、且、味わいに厚みもあり、またセパージュの特徴をより際立たせた、素晴らし

いワインに仕上がっている。またワイナリーの建物もワインと同じくすっきりとしたデザ

インで葡萄畑の広がりと調和して、すばらしいランドスケープを演出している。


「丸子」の歴史

 丸子地区は、パンフレットによると六世紀後半欽明天皇の皇子「椀子皇子」の領地で

あったことに由来する。

 丸子は明治、大正期には絹糸の生産地として、よく知られた地名で、「シナノケンシ

(株)」の操業の地であり、大正時代には数千人もの女工さんが働いていたと言われて

いる。そのため周辺には、多くの桑畑が広がっていた。しかしながら、その桑畑が時代

の変遷で、ゴルフ場や葡萄畑などに変化している。


「椀子ビンヤード」の地勢学的立地

上田市の市域は上田盆地全体に広がり、その市域の中央を「千曲川」が横断し、市域を

二分している。「市」中心部は(狭義の上田)は千曲川の河岸段丘上に位置している。(標高

約450m)

「丸子ビンヤード」は上田市中心部から約10キロ南東部の小高い丘陵地に開かれたワ

イナリーです。丸子は依田川水系に位置し、標高約600mから680mに位置し(上田市街よ

り約200m高い)、概ね東斜面となっている。



降水量

 気象庁メッシュ気候値(1952から1978)によると、丸子町は1164mm(上田市957mm)

であり、隣接する自治体で丘陵地、山麓地を有する真田町1296mm、東部町(1228mm)

(参考文献、土地分類基本調査 上田 長野県農政部農村整備課)

一般的に葡萄栽培の好適降水条件は800~900mmといわれており、それより200mm以

上多い「丸子」の地で良質な葡萄が生産されていることは、パート、ミクロクライメート

の特徴を良く理解した栽培技術成果によるものと思われる。


概要地勢

 椀子ビンヤードの丘陵北部は、第二段丘とそれに接続する山地台地で構成されている

それぞれの土質深部は礫岩、砂岩、泥岩で構成されており、その上に、礫岩、泥質を含む

砂岩が乗っている状態である。

「52番鑽井」掘削時の柱状サンプルから見る地質構造

表層から0.5m程度は腐食を含む粘土層であり、それ以下2mまで風化火山灰、それ以下

は角礫混じり砂層の構造となっている。自然水位は地上から56.6m下に形成されている

(52番井戸 丸子町61技術開発調査)



土壌



 園芸作物(蔬菜、果樹)の栽培で、良質な成果を求める場合の重要ポイントとして、

気象条件の他に、土壌、と土質構成が特に着目ポイントである。

 特に果樹栽培において、根部の伸張域(有効土層)の三相(固相、液相、気相)状態

が重要である。また土壌の孔隙は根の伸張のしやすさ、保水性に影響し、特に重要な要

素である。

 言い換えると土壌粒子間の隙間は水はけの能力を左右し、同時に根部呼吸(酸素供給

)や適度な水分供給も左右する要素である。

 「有効土層」(果樹の場合1~1.5m程度)に大量の「シルト」質の混入や「粘土層」が

形成されている場合、帯水層を形成し、根腐れ等を誘引することとなり、葡萄栽培には

不適な土壌とされている。(シルト、粘土層で栽培可能な植物は水稲、蓮などの水辺、

水性植物と柳類の一部のみである。)

 「椀子ビンヤード」の紹介パンフレットには「強粘土質」と記載されているが、これ

が「有効土層」まで「強粘土質」であるならば、葡萄栽培は不可能である。

  ワイナリーハウスロビーには土壌コアサンプルが展示されており、1.5m程度の土壌

構成を見ることができる。土壌に興味のある方は忘れずに!

コアサンプルの表層は腐食、シルトを含む埴壌土、壌土、砂壌土であり(目視とプラ

スチック表面の曇りで曖昧ではあるが)、礫とシルト分を含む砂質がこれに続いている

。土壌分類上では「褐色森林土」Brown Forest Soil (土地分類基本調査 上田 長野県

農政部農村整備課)となっている。かなり広域でワイナリー全域を包含している。隣接土

壌群は「黄色土」となっており、ワイナリーの耕作地の一部に混入しているならば、粘

土質が表層部分に存在する可能性はあるであろう。

 重粘土の場合、浸透性が非常に悪く、表面排水も地上面の凹凸で滞水する場合があり

(リーデル社の庄司大輔さん撮影写真の滞水作土表面乾燥割裂)から判断すると

5~10cm程度の粘土層が確認されるが、表層のみの粘土層と想定できる。

果樹栽培の有効土層は1~1.5m程度であるが「有効土層」内に不透水層を形成するよう

なシルト混合層、粘土質層が無ければ排水性が確保され、葡萄栽培には影響が少ないと

考えられる、しかしながら、一般的には表層滞水による病害虫の蔓延、土壌通気性の悪

化で根腐れなどが心配されるため、広域農地では大規模な明渠、暗渠、排水ドレーンな

どの農業土木的工事、大規模な土壌改良が必要とされる。

ビンヤードの一部を見ただけで判断するのは早計であるが(グーグルマップで明渠を

確認したところ、区画周囲に明渠は確認されたが、それほど多いわけではなく、一般的

な設置量である。)

説明を受けた耕作地に明渠は確認できなかった。また大規模の土壌改良工事がなされ

たとの説明も受けなかったことから、雨水の地下浸透には特に問題があるようには見え

なかった。


北陸新幹線 丸子トンネルから見た「椀子ビンヤード」

椀子ビンヤードの北東側には「北陸新幹線 丸子トンネル」2.318kmが貫通して

いる、このトンネル内で2000.2007年にコンクリート壁面の一部が剥落事故

を起こしている。主たる事故の原因として寒暖差をあげている。

トンネル内での寒暖差が大きいことは、外気温の寒暖差も大きいことを示唆してい

る。つまり、この地区の気温変化の大きさは「椀子ビンヤード」の葡萄の糖度や品質

にも影響していると考えられる。



「葡萄栽培」から見た栽培技術の特徴

1. やや小粒でばらけた果房をつけるクローン苗木の卓抜(果実に適度な日照量、風通

し、糖度の上昇)

2. 果房熟盛期の適量の除葉作業

3. 病虫害に適合する適切な農薬の散布

4. 雑草利用による乾土効果


「醸造技術」からみた特徴

1. 最新醸造設備による精緻な発酵技術

2. 複数産地からの樽、樽材の特性を生かしたブレンド技術

 

 考察

  上田盆地平坦部で「千曲川」その支流の水面からの水蒸気を含む、上昇気流が、盆地

を取り囲む山の山麓、丘陵地を上昇する際、空気中の水蒸気が上昇に伴い、気温の低い層

に衝突、混入した際、結露し雨滴を形成し、降雨となるため、上田市内平坦部より降雨量

が多くなると想定される。しかしながら年間降水量1164mmは塩尻1374mm、高畠

1328mmと比較して200mm程度年間降雨量は少なく、甲府1207.3mmに比較的近いがそ

れよりも低い降水量となっている。日本の葡萄栽培地域としては比較的降雨量は少ないと

いえる。

葡萄の生育環境としてはベストではない土壌や、降水量、ミネラル質に影響する岩石種

類(石灰岩、フリンジ、チャートなど)も包蔵しない栽培地でのワイン生産用葡萄の育成

には相当な努力と時間が必要であった想定できる。

パート、ミクロクライメートの精緻な観察力、分析力と共に、分析結果を確認するため

の数多くの試験による努力が、今日の「椀子ビンヤード」の成功をもたらしたと思える。

降水量の多い日本でのワイン用葡萄栽培の生産において「椀子ビンヤード」はモデルケ

ースとなり、各地に第2,3の「椀子ビンヤード」が誕生することに期待したい。


参考文献 土地分類基本調査 上田 長野県農政部農村整備課 




葡萄の騎士の会

幹事

白石和光




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