塩尻市のワイン用葡萄栽培地の地質、土壌について
(石灰岩層が塩尻市(大芝山)にも存在した)
葡萄の騎士の会
幹事
白石和光
塩尻は「鎖川」「奈良井川」「田川」の三河川により形成された、扇状地性砂礫層上に発達した町である。
「桔梗ヶ原」は「奈良井川」により形成された扇状地甠砂礫層に形成された波田礫層が基盤となっている。また片岡地区は「田川」と田川に流れ込む中小河川で形成された扇状地性の礫層で「桔梗ヶ原」と同様に波田礫層が基盤となっている。
今回訪れた「ワイナリー」(井筒ワイン、ドメーヌコウセイ)は「桔梗ヶ原」、「片岡台地」に位置し、同一基盤層である「波田礫層」上に位置している。
また、「田川」上流部、大芝山には石灰岩層があり、現在、土木、建築資材を生産する鉱山が存在している。このことは塩尻市の扇状地には石灰岩を含む礫層が含まれると想定される。
「桔梗ヶ原」と「片丘台地」(砂礫台地)
1,桔梗ヶ原台地
塩尻市の広丘高出から桔梗ヶ原にかけて、比高30m~50mの段丘面が分布している。この段丘面は奈良井川によってつくられた扇状地で、段丘面は比較的平坦であるが、北東に緩やかに傾斜している。したがって、段丘崖の高さは扇頂に近いところはおよそ15mあるが、北に行くにしたがって、高低差が小さくなり、扇頂部では数mとなる。構成物質は扇状地性の円礫からなる「波田礫層」で後期更新世の波田ローム層を礫層上位に整合している。この段丘面を波田面と呼ばれている。
2,片丘台地
塩尻北東部の広丘から南熊井にかけて標高760m~800mの緩やかな砂礫性台地が分布する。扇状地性の礫層である波田礫層から構成され、上位には部分的に新しい時代の扇状地をのせているが、標高の高い地域では中期~後期更新世の礫層である赤木山礫層、片丘礫層が分布する。
土壌
「桔梗ヶ原」、「片丘」両地区の表層土は「黒ボク土」である。「黒ボク土」は火山放出物からできた土壌で、火山灰土壌と呼ばれている。黒ボク土の分布域は一般的に火山山麓、台地などで、沖積地の一部など、比較的安定した地形に分布し、大量の腐植を含む表層があり、その下には漸移層、褐色の下層がある。「黒ボク土」は腐植含有量が高く、仮比重が小さく、孔隙が多く、透水性が大きい、またCEC,リン酸吸収係数が大きい等の理化学的特性を持っている。
つまり透水係数が高い性質を持ち(水はけが良い)、肥料の保持力も高く、適度な肥料保持と下層のロームの排水性の良さは、根部の伸張を促進することとなるため、良質のワイン用葡萄の生産にとって、重要な要素である。
水量と自然水面
塩尻市の年間雨量は1378mmであり、「葡萄」栽培地にしてはかなり降雨量である。因みに山梨県甲府は1207mm、丸子町(旧)は1164mmよりも200mm程度多い雨量である。しかし日本の「メルロー」の産地、山形上山、高畠1328mと比較すると同程度であり、メルローの栽培に関しては年間降水量がやや多い地域でも可能なのかもしれない。
農業用井戸のボーリングデータから「自然水面」の状況を確認したところ、「桔梗ヶ原」大門地区地表下21m、16m、宇賀平地区16.7m 「片丘」2.8m、7.9mであり「桔梗ヶ原」は自然水面が低く、不透水層の位置がかなり深い位置に存在していることが判明している。
また「片丘台地」は不透水層がかなり浅く、湿潤状況が表層まで影響しやすい可能性があることが確認された。特に「片岡地区」の自然水位2.8mは葡萄の有効土層に迫る深さであり、葡萄の成長と共に伸張する根部の発達をいかにコントロールするかが今後の課題となるであろう。しかし植物の生育は水無くして成り立たないわけであり、且、呼吸も必要となるため、横への伸張が想定され、これが果実へ、どのような結果をもたらすかは興味深く見守りたい。
語彙説明
土壌酸度(PH)
PH0からPH14まであります。化学的中性は7ですが日本における「土壌の中性」は6とされています。日本の土壌は火山灰土が中心でほとんどの地域が酸性土壌であり、植物はその土壌に環境適応しており、その土壌の標準的、適応条件がPH6であるため)
CEC(塩基置換容量)
土壌の保肥性を示す値、数字が多いほど肥料の保持力が高いことを示します。例えば砂などは保肥性が少なく低い値を示します。
リン酸吸収力
土壌がリン酸を吸収(固定)する程度を示す数値です。果実を収穫する作物はリンが非常に重要な役割を持っています。黒ぼくなどの火山灰土壌の場合、リン酸吸収係数2000を超えるため多量のリン酸質肥料が必要となります。
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白石和光
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